東京は夜の7時

土曜。結局今日も夫の実家へ。かつて散々迷惑をかけた夫が両親にしてあげられる親孝行と思えばちっとも苦ではない。


お昼は調布の幸楽苑。家からの近道を習得した。深大寺公園を抜けるのだが、広陵な芝生と片隅になかなか立派な遊具があって、道も綺麗に舗装されており、木々も彩りよく立ち並ぶナイスな公園であることを知った。今日はコートなしでは外に出られないくらい寒い上に冷たい雨が降っているから人っ子ひとりいなかったが、普段はきっと賑わっているに違いない。少し車を走らせるだけで近所には自然が残されている場所が沢山あって、改めていいところに引っ越したなぁと思う。ただ、その少し車を走らせて、というところが問題ではあるのだが。


都心へ向かう最中に娘は昼寝に入った。
これはチャンスだと思い、夫と娘には車内で寝ていてもらうことにして、幡ヶ谷にある古本屋へ一人で出向いた。

初めて訪れる幡ヶ谷。ドラッグストアがやけに目につく。弁当屋、美容室、居酒屋、たい焼き屋、インドカレー屋、八百屋、そして古本屋、等々、ミクロな商店街の中には恐らくここだけで全て事足りるであろう店がぎゅうぎゅうにひしめき合っている。そしてどれもこれも安い。この近くに住んでいたらきっと便利なんだろうな。東京では商店街の近くに住まうということはそれだけで家賃が跳ね上がる対象なのかもしれない。そして東京には、一体どのくらいこういった商店街があるのだろうと思った。わざわざ他所の商店街に行く用事もないので知らないが、きっとそれらは無数に存在していてこの幡ヶ谷のようにその土地の色を強く表しているのだろう。
でも、決して住みたくはないと思った。
ビルに囲まれた空は限りなく狭い。



娘はまだ寝ている。目当ての本がなかったので今度は渋谷センター街へ。また夫と娘に待機してもらい、一人で大都会の真ん中をコソコソ歩く。

渋谷は、言うまでもないが人が多い。そして賑やかだ。外が賑やかなのは当然だけど、どこへ行っても人の声がする。どこへ行っても人の気配がある。まぁ当たり前といえば当たり前なのかもしれないけれど、田舎暮らしが長い私にはそれがなかなか堪える。街行く人が皆イヤホンを耳にさして歩くのも納得した。

同じ人間、私と同じような年柄の人たちばかり。国籍は、見た目にはちょっと判りづらい。
それなのにまるで異星人のように見える。足早に俯きながら歩く彼らに歩調を合わせ、大勢に紛れるようにする。そうすると誰からも見られていない透明人間になったような気がしてホッとする。ここで素知らぬ顔して歩くには個人主義であることが一番で、誰も他人に関心など抱かないのだろうと思った。


ようやくブツを入手することができた。


一旦夫実家へ寄り、義母と一緒にスーパーへ。雨だからなのか、土曜だからか、時間帯がそうさせたのかわからないが駐車場が長蛇の列。私だけ車内に残り路駐する。ところが暫くして猛烈にトイレに行きたくなった。夫に電話し急いで来てもらい事なきを得たが、危なかった。

ジェイウェーブから流れてきたのはピチカートファイブの東京は夜の7時。



眠ることを恐れるかのようにいつまでも明るい東京の夜にも慣れてきた。

またあの安酒をしこたま飲まされ、娘と一緒に早々に就寝。

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