立春

節分、我が家では特になにもしなかった。
というのも、まず豆を2歳児に食べさせて喉に詰まりでもしたら…という懸念があったのと、恵方巻きがやたら高いということと、夫がその日から3日間有明で展示会をしているからだ。帰りが遅いし、まぁいいやと。

ここのところスーパーやそこかしこで目にする鬼に興味津々で、少し前までは「鬼=恐怖、恐怖=鬼」だったはずなのにそれを通り越してなぜか好きになったらしい。
 
なにか少しでも物音がするとこの世の終わりみたいな顔して私に飛びついてきて、「おに…」と怯えていたのに。

 先日図書館へ行ったときも、節分の前だからか鬼に関する児童書や絵本がカウンターの前にずらりと並んであって、「おに!おに!」と大興奮。児童書のひとつを手にとってご満悦。
でも、それ活字が多いけど…と、「それないないしよっか」と帰りに言ったら「おに!」と離さない。
いらないものは、大抵すんなり「ないない」と言って自ら手離すので、おぉこれはよほど気に入ったんだな…と、それも借りて帰ってきた。

帰ってくるなり鬼の児童書を取り出し、「よむ!」と読ませられる。
全ページに一応挿絵がついていたので、話はわかっちゃいないだろうけど娘は満足している。しかも鬼達が節分の宵に集まって夜明けまで宴をする…という物語なので、沢山の色とりどりの鬼が描かれている。「おに!いっぱいだねー!」と嬉しそう。いい本を選んだな。


子供向けの児童書ね…小学校低学年くらい向けのね…と、少し舐めてかかっていた自分を恥じ入る。
とても素晴らしい物語だった。なぜか音読しながら目頭があつくなるほどに。

なぜだろう。話が素晴らしかったのは勿論のことなんだけど、もう自分は大人になってしまったんだという寂しさからだろうか。
もう純粋無垢ではない、むしろ薄汚れてヨレヨレの自分にはあまりにも眩しい。


「オニはソト、フクはウチ」
という掛け声が一般的だけど、その話の中では鬼達が、それも鬼の子供たちが
「冬はそと、春はうち」
と、なんべんもなんべんも全員で楽しそうに声を合わせながら春を呼ぶのだ…なんて泣けるの…





そうして翌日の立春、朝起きて窓を開けたら春のにおいがする。
暦の上では立春だからといって、こうもうまくいくものだろうか。でも思えばいつもそうだ。立春だけじゃなく立夏立秋立冬も、不思議とその日になると次の季節の訪れを感じる風が吹く。次の季節のにおいがする。
プラシーボ効果なのかもしれない。私はそういう類のものに惑わされやすいほうだと思う。


まぁ、なんでもいいけれど、少しやわらかくなった空気とどこからか漂ってくる梅だか桃のにおいを吸い込んで、オニの子らよありがとう…と薄い水色の空を仰いだ。










今日は迎えには行かないけれど、昨日と一昨日は夫を迎えに有明まで行った。
正直私は娘と二人で乗る車は好きじゃない。できることなら車での外出は避けたい。
なぜなら、そう、グズられるととても困るのだ。慣れない東京の道を運転するだけでも一苦労なのに、娘をあやす余裕なんてない。運悪くそうなると、もう二度と出かけないという気持ちにすらなる。

でも頼まれたものは仕方ない…。

娘の機嫌が最高潮のとき、家を出る。飲み物もおやつも準備は万端。もしものときのトトロ、iPadも持った。
初日は下道で行ってみた。
道に迷いまくって一時間半もかかった。
それでも娘はフツーに大人しく乗っていた。
思えばもう、そうなんだった。
あの頃みたいにそんなに愚図らない。窓の外の流れる景色を楽しむということが出来てきたからだ。
だからそんなに緊張することもないんだけど、でも、やっぱり苦手。よっぽど気合いが入らないと自発的に車では出掛けたくない。もはやトラウマなんだと思う。


二日目の昨日は、せっかくお台場のほうに行くんだったら早めに行ってどこかで遊ばせよう!と思い立ち、家を出る。
持病?の偏頭痛が昨晩から続いてたのもあって、あまり運転はしたくない…と、一番近くのインターチェンジから高速に乗る。
そうしたら20分くらいでお台場に到着。早すぎて驚いた。いかに下道が混んでいて、信号が多いか。
首都高はとてもとても緊張する。助手席に乗っていたらもの凄く刺激的で楽しい道なのに、周りを見る余裕などこれっぽっちもない。
とにかく怖い。道が複雑なのと、くねくねなのと、細いのと、飛ばす車がめちゃくちゃ多いことと、ビルの圧迫感と…もう、一歩間違えたら死ぬんだ、という絶望の中でハンドルを握っている。

そうしてやっとレインボーブリッジを渡るときのあの眺望と爽快感と達成感と言ったら。






最初は海辺を歩いて、「うみ!とり!ふね!」と楽しそうな娘。
そのあとはアクアシティ、だったかな?に行ってウロウロ。初めて行ったような気もするし、中学のとき修学旅行で行ったような気もする。

中国人観光客しかいなかった。平日だからかとても空いていた。きっと休みの日は賑わっているのだろう。
ペットショップで犬を見て、サンシャイン水族館からやってきている魚たちを見て、外にあるイルミネーションを見て、夕焼けに染まった東京を眺めて、モノレールを見て、娘は終始楽しそうだった。よかった。


ゼップ東京の隣の観覧車を見て、既に日は落ちてピカピカ光ってたから「はなび!」と興奮していた。
それとフジテレビがプロジェクションマッピングのようなLEDなのかわからないけど超ド派手なイルミネーションを社屋の全面に施していたので、とにかく華やかだった。帰りレインボーブリッジあたりから見たお台場は、なんだかもうすごい、東京。大都会。
反対側も高層ビル群と東京タワーがきらめいて、きれいだったな。


展示会の会場である東京ビッグサイトの建物でもプロジェクションマッピングをしていた。肉眼で見たのは初めてだと思う。娘はこちらも「はなび!」と興奮していた。


夫の顔を見た途端、激しい頭痛に襲われる。
それでも、折角だからと帰りの道すがら東京タワーの真下を通った。娘よ、これが東京タワーだ。ずーっと上を見上げてた。



常備薬を飲んでも痛みは引かず、のたうち回るほど痛い。
脈拍と同時にズキン、ズキン、いや、ズキンなんて生易しいもんじゃないけど、とにかく痛い。吐き気もすごい。
何度も何度も寝返りを打って、その度唸って、痛くて痛くてさっぱり眠れなくて、時計を見たら丑三つ時。もうだめだ、イヴはどこだ!とフラフラで起き上がり一気に4錠飲んだ。

再び横になって、深呼吸。
深呼吸を意識しないと私の場合とても危険で、あっというまに過呼吸になってしまう…

「痛い!」
「ほんとにただの頭痛?」
「もしかして病気なんじゃ?」
「このまま死んだら…(具体的に妄想、そして隣で寝ている娘を見て涙ぐむ)」
「絶対娘を残して死ねない」
「痛い!」
「このまま死んじゃうんじゃ…」
という思考パターンになるので、まんまとパニック状態に陥る。

そういえば陣痛のときも、気持ちを平静に保つので必死だったっけ…ほんの少しでも取り乱したら絶対ヤバイ、そこのところ頑張りすぎて結局ひと言も声を発さず黙って産んだんだったよなぁ…



なんて考えてるうちに、薬が効いてきたのかなんなのか急速に痛みは落ち着き、共に眠気がやってきた。


朝起きて、痛くない。それだけでどれだけホッとしたか。

なのに、やっぱり昼すぎくらいから頭痛のタネがやってくる。
そして夕方から本格的に始まる。
さっき薬飲んだけど、あまり効いてない…


こんなふうに携帯弄ってるから余計ダメなんだよな。わかってるんだけど、だって、書いとかないと忘れちゃう。

それにしてもこの頭痛、なんとかしたい。切実…

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